コロナ禍で海外旅行が難しい今。妙に懐かしく感じる1年前のニュージーランドでのアイス巡り。アイスクリームの写真を見ながら、あの時の味わいを思い出してみましょう。
アイスクリーム大国、ニュージーランドの実力
世界有数の酪農大国として知られるニュージーランド。実は1人当たりの年間アイスクリーム消費量が世界第2位という、アイス大国なんです。過去には何度も世界一に輝いた実績も。これだけ聞いても、アイス好きにはたまらないですよね。
乳製品の品質にこだわり、新鮮な生乳を活かした商品作りが特徴です。実は現地には大小様々なアイスクリームメーカーが存在していて、各社がユニークな商品開発を競い合っているんです。
そんなアイスクリームの聖地へ、私はアイス仲間数人と「市場調査」という名の食べ歩き旅を決行しました。観光?いいえ、それは二の次。事前に用意した店舗リストを片手に、ひたすらアイスクリーム店を巡る特別な旅。胃袋を確保するため、普通の食事は最小限に抑えました。もはや修行?いえいえ、これぞ私たちの理想の旅なんです。
実は出発前、ちょっと不安だったんです。「日本人の繊細な味覚に合うのかな」って。でも、これが見事な杞憂でした。良質な生乳を使ったニュージーランドのアイスは、どの店に入っても驚くほどの高品質。しかも、日本では味わえない濃厚さと、不思議と後味がさっぱりしているという独特の特徴があるんです。
国民的アイス「ホーキーポーキー」との衝撃の出会い
ニュージーランドで圧倒的人気を誇るのが「ホーキーポーキー(Hokey Pokey)」。バニラやカスタードベースの濃厚なアイスに、サクサクのキャラメル(トフィー)粒を贅沢に混ぜ込んだ、これがもう病みつきになる美味しさなんです。日本ではまだまだマイナーですが、一度食べたら忘れられない魅力的な一品です。特筆すべきは、このキャラメル粒の絶妙な大きさと食感。口の中でホロリと崩れる瞬間の幸福感がたまりません。アイスとの温度差で、より一層キャラメルの香ばしさが引き立つんです。
日本では京都のアイガー社の「エメラルドホーキーポーキー」が代表格。高級スーパーや業務スーパー、ネットでも買えるので、ぜひ試してみてください。本場の味を忠実に再現していて、ニュージーランドの雰囲気を十分に味わえますよ。
実は現地の高級ブランド「KAPITI(カピティ)」も日本に上陸しているんですが、残念ながら本場で一番人気のホーキーポーキーは日本未発売。これは現地で食べるしかありません!
オークランドの絶品アイス店、徹底ガイド!
今回、オークランドを中心にホーキーポーキーを求めてアイスクリーム屋巡りをした中でも、特に気に入ったお店を紹介します。
Giapo(ジアポ)
オークランド中心部で10年以上の歴史を誇る、ニュージーランドを代表するアイスクリーム店。Giapoの魅力は、アイスクリーム作りへの徹底したこだわりと、独創的な表現力の高さにあります。
ニュージーランド産の最高級の生乳とクリームをベースに、季節のオーガニック食材を厳選して使用。地元の酪農家や農家を支援する取り組みの一環として、新鮮な食材を積極的に取り入れているんです。さらに、すべての商品がグルテンフリーなのも特徴的。
アート × アイスクリーム
「アート」と「アイスクリーム」の融合をコンセプトに掲げる店内には、思わず目を疑うような作品の数々が。特に印象的だったのが、まるで本物のように精巧に作られた巨大なイカ(ダイオウイカ?)の形をした「Colossal Squid Cone」 。
インパクト抜群の見た目に、味も確かな実力派なんです。他にもフォトフレームをイメージした「Selfie Frame Cone(自撮りコーン)」など、フォトジェニックな商品も充実。季節限定フレーバーは、地元食材を活かした意欲作揃いで、訪れるたびに新しい驚きと出会えます。
おもてなしの心遣い
初めての来店でも安心。親切なスタッフが各フレーバーの食べ比べサービスを提供してくれます。夜10時まで営業しているので、ディナー後のデザートタイムにもぴったり。アイスクリームの新しい魅力に出会える、特別な空間です。
Island Gelato(アイランドジェラート)
オークランドのフェリーターミナルに2014年オープンした、ワイキキ生まれのジェラート専門店。実は「ニュージーランド発」ではありませんが、ニュージーランドに2店舗あるのでご紹介します。
なんと70種類以上のフレーバーに加え、週替わりのスペシャルメニューも展開。すべてのジェラートを毎日店内で丁寧に手作りしています。多彩な食のニーズにも対応していて、ヴィーガン、乳製品不使用、グルテンフリーのオプションも充実。
店内に一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが色とりどりのジェラートたち。ショーケースは、まるでアーティストのパレットのよう。鮮やかな色彩が織りなす景色は、それだけでも見る価値ありです。
一番のおすすめは季節のフルーツフレーバー。キウイやパッションフルーツなど、ニュージーランド産の新鮮な果物を贅沢に使用。その土地ならではの風味が存分に活きています。
テラス席からは港の絶景が一望できるんです。潮風に吹かれながら味わうジェラートは、まさに至福のひととき。景色も味わいも、どちらも「ベストシート」で楽しめる特別な空間です。
Melt Newzealand Natural(メルト)
オークランドの人気スポット、Viaduct Harbour(ヴァイアダクトハーバー)に佇むアイスクリーム専門店。開放的な店内からは、ウォーターフロントの美しい景色を一望できます。
定番から創作まで、22種類のフレーバーをラインナップ。ベーシックな味わいはもちろんのこと、マカロンで優しく包んだ「マカロンアイス」や、手作りクッキーのやさしい甘みが広がる「アイスサンドイッチ」など、ユニークなアレンジメニューも充実。一つ一つのメニューに遊び心とお店のこだわりが感じられます。
大きな窓が特徴的な店内は、まるでオープンカフェのような開放感。ゆったりとしたソファ席は、つい長居したくなってしまうほどの心地よさ。地元の学生さんからご年配の方まで幅広い世代が訪れる、まさに街の憩いの場。ニュージーランド全土でフランチャイズを展開する実力派。一つ一つの商品に手作りの温もりが感じられ、地域に根ざした味づくりにこだわっています。各店舗で異なるフレーバーも用意されているので、訪れるたびに新しい出会いが楽しめますよ。海を眺めながら、ゆっくりとアイスタイムを過ごしてみてはいかがでしょうか。
Milse(ミルズ)
2013年4月、ブリトマート駅近くにオープンしたデザートレストラン。店名の「Milse(ミルズ)」は、シェフのブライアン・キャンベル氏の故郷スコットランドのゲール語で「デザート」を意味します。独創的なスイーツを求めて、夜10時を過ぎても絶えない人気店。格子状の木工細工が織りなす店内は、まるで「チャーリーとチョコレート工場」を大人向けにアレンジしたような神秘的な空間。洗練されたインテリアと親密な雰囲気が、特別なデザートタイムを演出してくれます。
看板メニューの「Bombe Alaska」は、注文を受けてから仕上げる出来立てスイーツ。パフォーマンスさながらの調理風景は、まさにデザートエンターテインメント。滑らかなアイスクリームをサクサクのメレンゲで包み、表面を丁寧に炙り上げていく様子は圧巻。
食べてみると、温かなメレンゲと冷たいアイスのコントラストが織りなす、思わず目を閉じたくなるような贅沢な味わい。パティシエの技が光る瞬間です。
アイスバーも絶品。シルクのように薄くコーティングされたチョコレートの中には、驚くほど滑らかなアイスクリーム。一口食べれば、その職人技の確かさに思わず唸ってしまいます。
オークランドで十数軒のデザート店を巡りましたが、このMilseの魅力の虜になり、何度も足を運んでしまいました。デートや記念日のディナー後に、特別なデザートを楽しみたい方にぜひおすすめしたい隠れ家的スポットです。
miann(ミアン)
ブリトマート駅から徒歩5分、アーサー・ネイサン・ビルのロビーに佇む隠れ家的デザート専門店。オークランドに3店舗、クイーンズタウンに1店舗を展開する「Miann」は、ニュージーランドを代表するデザート&チョコレートの名店。
すべてのデザートは職人の手作り。季節のフルーツや厳選されたチョコレートを贅沢に使用し、一品一品丁寧に仕上げています。ショーケースに並ぶスイーツは、まるでジュエリーショップのよう。その美しい佇まいに、思わずため息が漏れます。
特筆すべきは、芸術的な見た目と確かな味わいを兼ね備えたジェラートの数々。定番のホーキーポーキーは、さすがニュージーランドならではの完成度。でも、私の一推しは色鮮やかなトロピカルフルーツのフレーバーなんです。中でもパッションフルーツは驚きの美味しさ。甘みと酸味の絶妙なバランス、そして果実本来の風味が存分に活きています。一度食べたら、また食べたくなる。そんな中毒性のある味わいです。
ブリトマート店の魅力は、広々とした開放的な空間。テラス席でゆっくりとデザートを楽しむのがおすすめです。特に夕暮れ時は、都会の喧騒から離れた特別な時間が過ごせます。
上質な空間と確かな味わい。デザートとチョコレートへの情熱が、隅々まで行き届いています。特別な日のデザートや、大切な人へのギフトにも、ぜひ選んでいただきたい一店です。
Juicy NZ Strawberries(ジューシーNZストロベリーズ)
オークランドのクメウに広がる、地元で愛されるいちご農園カフェ。採れたてのいちごを使った贅沢なデザートの数々が、訪れる人を魅了しています。
最大の魅力は、注文を受けてから作る「いちごブレンド」。農園で収穫された新鮮ないちごを、その場でブレンダーマシーンを使ってアイスクリームと贅沢にミックス。いちごの甘みと香りが存分に活きた、ここでしか味わえない特別なアイスクリームです。
見逃せないもう一つの逸品が、フローズンヨーグルト。すっきりとした口当たりの中に、深いコクと豊かな味わいを感じる絶妙なバランス。暑い日のデザートにぴったりです。
ボリュームは日本のサイズ感を遥かに超える”ビッグサイズ”。でも、なめらかな口どけと爽やかな後味で、気付けば完食していることも。
家族経営ならではの温かみのある空間で、ゆったりとした時間が過ごせるのも魅力的。店舗横に置かれたレトロなトゥクトゥクは、思わず写真を撮りたくなる人気のフォトスポットです。
新鮮ないちごをそのまま味わうのはもちろん、様々なデザートで楽しめるのが嬉しいポイント。オークランド観光の際は、ぜひ立ち寄っていただきたい特別なスポットです。
Kapiti(カピティ)ストア
1984年、ロス・マッカラムとネビル・マクノートンによって誕生したKapiti。カピティ・コーストのリンデールにある小さなチーズショップ兼工場からスタートし、2005年にはニュージーランド最大の乳製品会社フォンテラの傘下に。今では「ニュージーランドのハーゲンダッツ」と称される高級ブランドへと成長しました。
今回立ち寄ったオークランドのショートランド・ストリートに構えるKapitiストアでは、ブランドを代表する高級チーズとアイスクリームがずらり。同ブランドの最大の特徴は、素材へのこだわり。ニュージーランドの広大な牧草地で育った乳牛から搾った生乳(グラスフェッドミルク)を使用し、自然本来の美味しさを大切にしたフレーバー作りを行っています。
一口目の濃厚な味わいから、すっきりとした後味まで。まさにプレミアムアイスクリームの真骨頂と呼ぶにふさわしい完成度の高さです。価格は確かにプレミアム級ですが、その品質は間違いなく価格に見合う価値があります。
街中の期間限定店舗でも出会えることがあるので、観光の途中で見かけたら、ぜひ味わってみてください。ニュージーランドの大地と匠の技が生んだ、極上のアイスクリーム体験が待っています。
TipTop工場で、アイスの世界に潜入!
ニュージーランドの大手メーカー「TipTop」の工場見学も、アイス好きには見逃せないスポット。市街から車で20分とアクセスも便利です。
要予約ですが、陽気なガイドさんの案内で、普段は見られない製造現場の裏側を覗けるんです。
工場見学では、原料の配合から製造、パッケージングまでの工程を丁寧に解説してくれます。驚いたのは、品質管理の徹底ぶり。温度管理はもちろん、原料の配合比率まで細かくチェックしているんです。見学後のテイスティングタイムも楽しみの一つ。出来立てアイスの味わいは格別でした。
濃密なアイスの旅を終え、気づけば体重+2kg…。でも、この贅沢な体験は、体重増加なんて比じゃない価値がありました。スマホの写真を見返すと、観光スポットより圧倒的にアイスの写真が多いのは、まさに今回の旅の本質を表しています(笑)。
特に印象的だったのは、日本なら絶対に分け合って食べる量(パイントサイズ:約473ml)を、一人でゆったりと楽しむ現地の方の姿。アイスを心から愛する国民性が垣間見えた瞬間でした。
ニュージーランドのアイスクリームには、確かな品質と独自の魅力があります。コロナが落ち着いたら、また新作との出会いを求めて訪れたいと思います。それまでは、日本で手に入るニュージーランドアイスを楽しみながら、次の旅を夢見ることにしましょう。美味しい思い出と共に。
投稿者プロフィール
- 年間に食べるアイスクリームの数は1,000種類以上。2010年コンビニアイスに特化したレビューサイト「コンビニアイスマニア」を開設し、アイス評論家として活動を始める。2014年には『一般社団法人 日本アイスマニア協会』代表理事に就任。アイスクリームのスペシャリストとして TBS『マツコの知らない世界』をはじめ多くのメディアに出演。冬季のアイス市場を盛り上げるための「冬アイスの日」を制定するほか、全国から厳選したアイスが集結するイベント・アイスクリーム万博「あいぱく®」などを主宰。著書に『日本懐かしアイス大全』、『日本アイスクロニクル』、『ご当地アイス大全』(辰巳出版)等がある。
最新の投稿
- コラム2024年11月30日人形町の路地に漂う、至福の香り ~110年の歴史が紡ぐ、極上ほうじ茶ソフトクリーム~(森乃園)
- コラム2024年10月14日岡山の伝統を冷やした逸品 〜岡山・大手まんぢゅうソフト、和の味覚革命〜
- コラム2024年10月10日秋田の隠れた宝石『じゃっぷぅ』—能代が紡ぐ味と記憶のバトン
- コラム2024年10月7日絶景と絶品が織りなす至福の時間 ー 秋田・土田牧場