岡山への小旅行、和菓子を求めて
アイスマン福留のご当地アイス巡礼の旅。
今回はソフトクリームの旅。飛行機に乗って岡山へ。
東京から約1時間、岡山桃太郎空港に降り立つ。
「桃太郎」で有名な岡山は、思いのほか気軽に行ける距離だ。10月の爽やかな秋風が心地よい。今回のアイス旅でトップバッターとなるのは、ある和菓子の名店。
岡山空港から車を走らせること約40分。国道を東へ進み、雄町方面へ向かう。目指すは大手饅頭伊部屋の雄町工場売店だ。
岡山のお菓子と言えば、「きびだんご」や「むらすゞめ」、「調布」など様々あるが、「大手まんぢゅう」もその筆頭だ。甘酒の風味とあんこの上品な甘さ、なめらかな舌触りが特徴で、県内外に多くのファンを持つ。
大手まんぢゅうソフト、その誕生と魅力
今回の目的は、大手まんぢゅうの味わいをイメージして作られた「大手まんぢゅうソフトクリーム」だ。2019年に雄町工場限定で発売され、翌年には「大手まんぢゅうカフェ」でも提供が始まった。
「大手まんぢゅう」自体は岡山の銘菓として広く知られているが、この「大手まんぢゅうソフトクリーム」は比較的新しい商品。まだ岡山の人々の間でも、知る人ぞ知る味と言えるだろう。
伝統の味、大手まんぢゅうの由来
大手まんぢゅうは、北海道産小豆と特製白ざら糖で練り上げたこし餡を、自社製米こうじの甘酒で作った薄皮で包み蒸し上げた酒饅頭だ。その名は、岡山城大手門付近に店があったことから、当時の備前藩主池田侯によって名付けられたという。
天保八年(1837年)創業の大手饅頭伊部屋。備前の良質な米から丹念に作られた甘酒を使用し、北海道産小豆のこし餡を薄く包んで蒸し上げる。その製法は今も変わらない。
いざ、大手まんぢゅうソフトを味わう
さて、いよいよ大手まんぢゅうソフトを頂く時が来た。価格は400円。発売当初は350円だったそうだが、この価格でも十分リーズナブルだ。ここ、雄町工場売店では 4月1日から10月31日までの期間限定販売だが、「大手まんぢゅうカフェ」では通年で楽しむことができる。
一口食べると、そのクオリティの高さに驚く。味が整っているので、おそらくソフトクリームのリーディングカンパニーが監修したものだろう。数ある監修ソフト(フレーバー)の中でも、秀逸な出来栄えだ。
色はやさしいあずき色。大手まんぢゅう特有のなめらかなこし餡の舌触り、甘酒の風味がしっかりと再現されている。「餡」を使った冷菓「アイス饅頭」とは、また違った魅力がある。
あんこの存在感はありながらも、主張は強すぎない。ソフトクリームだからこそのやさしい味。これなら、あんこが苦手な人でも十分に楽しめるだろう。和菓子を再現していることもあり、モナカ生地のコーンとの相性も抜群だ。まさに大手まんぢゅうとソフトクリームの”いいとこ取り“をした逸品。大手まんぢゅうの繊細な味わいと、なめらかな”こし餡”の舌触りをソフトクリームで楽しめる。北海道産あずきを使用した自家製餡と甘酒の風味が見事に調和し、格別な味わいを生み出している。
秋の爽やかな風に吹かれながら味わう、岡山ならではの和の逸品。この大手まんぢゅうソフトは、まさに岡山を象徴する味と言える。次に岡山を訪れる際は、必ずまた立ち寄りたいと思った。
帰りは新幹線で3時間かけてゆっくりと東京へ戻る。
窓から見える景色を眺めながら、今回の旅で巡った岡山の数店舗のソフトクリームを思い返す。その中でも、大手まんぢゅうソフトの上品な甘さとなめらかな食感はとても印象的だった。また岡山を訪れ、あの味を楽しみたい。
店舗情報
大手饅頭伊部屋 −雄町工場−
岡山市中区雄町201-1
TEL:086-279-3688
営業時間:8:30~18:00 ※夕方は商品が売り切れる場合あり
(ソフトクリームは9:30~16:30)
定休日:火曜日
https://www.ohtemanjyu.co.jp
投稿者プロフィール
- 年間に食べるアイスクリームの数は1,000種類以上。2010年コンビニアイスに特化したレビューサイト「コンビニアイスマニア」を開設し、アイス評論家として活動を始める。2014年には『一般社団法人 日本アイスマニア協会』代表理事に就任。アイスクリームのスペシャリストとして TBS『マツコの知らない世界』をはじめ多くのメディアに出演。冬季のアイス市場を盛り上げるための「冬アイスの日」を制定するほか、全国から厳選したアイスが集結するイベント・アイスクリーム万博「あいぱく®」などを主宰。著書に『日本懐かしアイス大全』、『日本アイスクロニクル』、『ご当地アイス大全』(辰巳出版)等がある。
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