七転八倒のアイス道

あいぱく

最初の一滴の水は、チャレンジを重ねることで小さな川となり、やがて大河となって海へと続く。ちょっと大袈裟だけどこのサービスが誕生するまでにはちょっとした道のりがあった。ここで「房蔵總本舗」を開設するまでの経緯をざっくりとまとめてみようと思う。あ、ざっくりという割にはなかなかの長文なのでお暇な時に・・・どうぞ。

最初のイベントの参加者はひとり

アイスの活動をはじめて少し経った2013年8月、はじめてアイスクリームのイベントを開催した。インターネット上で参加者を募り「アイスを食べる会」を企画したのだ。募集枠は8名、参加費用は1000円。こじんまりとした小規模イベント。SNSで告知をしてもほとんど反応は無く結局参加者はたった1名だけだった。有料でスペースを借りてわざわざ北海道からアイスクリームを取り寄せたのに参加者はたったひとり。もちろん採算は合うわけがない。集客の難しさと自分たちの無力さを実感した。しかし一番戸惑っていたのはこの時の参加者だっただろう。本当に申し訳ないことをした。アイスを食べながらがっつり2時間ほど語り合ったのを今でも憶えている。

アイスクリームを食べる会

アイス好き団体一般社団法人日本アイスマニア協会を設立

その後、懲りずにイベントを開催。日本アイスマニア協会という団体を設立し、アイスの検定試験「アイスマニア検定」に合格した会員様限定で「アイスマニアミーティング」という企画をはじめると、参加者は30名…50名…100名~と徐々に増えていった。しかし収益を考えずに趣味として開催していたので、やればやるほどお金もかかる・・・。

アイスマニアミーティング

アイスクリーム万博「あいぱく」スタート

「もっと多くの人に楽しんでもらえる大きなアイスクリームイベントをやりたい!」と意気込み、2015年のゴールデンウイークに原宿のイベントホール(ラフォーレミュージアム原宿)を借りてイベントを開催。テーマは「アイス好きの楽園」。アイス好きが集まるアイスまみれの幸せ空間をイメージした。全国から100種類以上のアイスを取り寄せて会場にズラリと並べる。若者の街「原宿」という土地のイメージに合わせてポップでかわいいネーミングは無いかと頭をひねり、「アイスクリーム万博(当初はアイスクリーム博覧会)」と「アイスをぱくぱく食べる」という意味を込めて、イベント名は「あいぱく®」に決定した。

あいぱく

記念すべき第1回目の「あいぱく」東京・原宿開催。来場者数は5日間で1万5000人。この時は有料イベントで入場料800円をいただき、オリジナル保冷バッグをセットにした。イベントの反響は予想以上に大きく、連日行列(ラフォーレ原宿の地下2階から6階まで)ができた。ありがたいことにテレビのほぼ全局が取材に来てくれて大変盛り上がった。・・・のは束の間、イベント終了後にフタを開けてみると約1千万円の大赤字。買い取った大量のアイスの在庫。特に無駄に数万個つくってしまった保冷バッグが僕らの首を強く絞めつけた。余ったアイスを保管する冷凍倉庫代は当時自分たちが借りていたシェアオフィスの家賃の何倍もするというシュールな状況であった。

あいぱく

「どん底」とはこういう状況をいうのだろう。現在当協会の専務理事を務める八木(日本唐揚協会専務理事も兼任)に資金面で援助を受けつつ、野球の球場や競馬場でテントとのぼりを立ててアイスを売る日々がしばらく続いた・・・。

神宮球場でアイス販売

地方でイベント開催

初回で大赤字を叩きだしたイベントだが、テレビの反響は大きく、全国各地からイベント開催依頼がポツポツと入りはじめた。記念すべきイベント地方開催の第1回目は「鹿児島」。

あいぱく

JR鹿児島中央駅直結の商業施設「アミュプラザ鹿児島」主催で、なんと7日間で来場者数は12万人。オープン前には2500人の待機列ができ、2階から埋め尽くされたイベント会場を眺めて胸をザワつかせた。(→ イベントレポート

あいぱく

これも主催のアミュさんとJR九州エージェンシーさんのおかげ。ここで「あいぱく®」の地方開催モデルが出来上がった。その後「あいぱく®」の開催地は増えていく。3年くらい経つと全国各地9箇所ほど開催されるようになり、少しずつイベントの知名度も高まり来場者数も増えていった。ある百貨店では不動の人気を誇る「北海道物産展」の集客数を上回り見事1位を獲得。たくさんの方々の協力とご来場いただいたアイス好きの皆さまのおかげで5年間で累計来場者280万人を超える巨大アイスイベントに成長した。

あいぱく

新型コロナでイベントが中止

ちょっとしたアイスの試食会からはじまり、アイスに向き合い続けて無我夢中で取り組んでいたら、いつの間にかアイスクリーム専門のイベント屋になっていた。ようやく事業が軌道に乗ったと思った矢先、今回の新型コロナウイルス。予定していたイベントはすべて中止。

元々アイスクリームのネット通販を計画していたが今の状況を乗り切るためにも予定を早めてオープンさせた。今回の新型コロナショックは誰のせいでもないが以前からイベントに出展いただいているメーカーさんのためにも少しでも役立ちたい。

また毎年イベントを楽しみにしてくれている常連さんも多くいる。今年もきっと楽しみにしてくれていたに違いない。そんな方々にもおいしいアイスクリームと届けたい。

アイスクリームのネット通販は、今までイベントを軸に活動をしてきた僕らとしては新たな挑戦。今回の事業は冷凍物流のパイオニアである高崎の松村乳業さんとタッグを組んでいる。「アイス物流のプロ」と「ただただアイスが好きな人たち」によって生まれた新サービス。

おひとり様参加のアイス試食会からはじまった「あいぱく®」。何事も第1歩目を踏み出すことが大事。まずは歩き出し、さらに夢中になって歩き続けていれば新しい景色が見えてくるのだろう。今まで関わった多くの人達の協力があって今に至る。

きっとこの先も七転八倒を繰り返していくのだろう。当サイト(房蔵)に会員登録してくれているアイス好きの皆さまに心から感謝し、同時に心から満足してもらえるような”アイス好きのための通販サイト”を目指して精進していきます。

明治2年、横浜馬車道通りで日本ではじめてアイスクリームを販売した”アイスクリームの父”「町田房蔵」の名にあやかって付けた「房蔵總本舗」。僕らは第2の房蔵を目指してこれからじっくり時間をかけて小さな物語を紡いていきたい。

すでに登録いただいた皆様、そしてたまたま辿りついてくれた皆さま、今まだ産声をあげたばかりの房蔵の成長を今後一緒に見守っていただければ幸いです。

房蔵總本舗

房蔵繁栄の図

 

投稿者プロフィール

アイスマン福留
アイスマン福留アイスクリーム・スペシャリスト
年間に食べるアイスクリームの数は1,000種類以上。2010年コンビニアイスに特化したレビューサイト「コンビニアイスマニア」を開設し、アイス評論家として活動を始める。2014年には『一般社団法人 日本アイスマニア協会』代表理事に就任。アイスクリームのスペシャリストとして TBS『マツコの知らない世界』をはじめ多くのメディアに出演。冬季のアイス市場を盛り上げるための「冬アイスの日」を制定するほか、全国から厳選したアイスが集結するイベント・アイスクリーム万博「あいぱく®」などを主宰。著書に『日本懐かしアイス大全』、『日本アイスクロニクル』、『ご当地アイス大全』(辰巳出版)等がある。
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